2018年8月、タイ・バンコクにある MUSEUM OF NATURAL MEDICINE(サムンプライ博物館) を訪れました。この博物館は、日本で言えば漢方ミュージアムのような感じです。
展示物も多く見ごたえがありました。タイの伝統的な薬を作る道具などの展示もありました。特に印象的だったのは、館長との対話です。彼が語る中医学との比較、タイの薬事情など、とても興味深いものでした。
もしバンコクに行く機会があれば、ぜひ足を運んでみてください。特に漢方、養生、薬、伝統医療に興味ある方におすすめです。
The Museum of Natural Medicine
http://www.cu100.chula.ac.th/story-en/699/
https://univer2017.wordpress.com
交通:BTSナショナルスタジアムかサイアムが最寄りです。サイアムから5-7分位のイメージです。
目次
タイ伝統医療への出会い:木曜午前中の幸運
タイ在住の方のブログをみて、こちらの博物館が、水曜と木曜の午前中しか開いてないと知り、ダメもとで木曜の11時頃電話しました。
やはり、あと1時間で閉まると聞き、「アソークからすぐ行きます!」というと、 「じゃあ待っているよ」と言ってくれたので「とにかくすぐ行きます!」と電話を切り向かいました。
1Fが薬局になっていて、案内されて薬局のカウンターの中を通って3Fに上がりました。
前日にタイハーブの普及の活動をしている、サムンプライファームプロジェクトの磯野さんから、タイの伝統医療は中国伝統医療とインドの伝統医療の影響を受けていると聞き、それを実感できるものが見たいと思っていたのです。
サムンプライファームプロジェクトでのハーブボール1日体験+タイの伝統医療事情講座 レポートはこちら ⇒ https://pandax.xii.jp/herbball
館長によるプライベートツアー 第二の幸運
受付で、先程の電話に応じてくれた方、館長ビチェン(Vichien วิเชียร)さんが対応してくれました。館長からお話が聞けるとは本当にラッキーです。
ビチェンさんはかつて1Fの薬局で働いていて、2001年に博物館ができて以来、博物館の管理をしているとのことでした。チュラロンコーン大学(だと思いますが)で学生に生薬概論を教えていているんだよと話してくれました。成分抽出などは別の先生が教えていて、大学にはたくさんの薬学の先生がいるとのこと。ビチェンさんはその年度(2018年)でご退職予定とのことでした。
タイの伝統医療がインドと中国の影響を受けているかについて
早速、タイの伝統医療がインド、中国の影響を受けているか聞いていました。
(ここからの情報は、館長の話を私が解釈したものを書いています。理解が誤っている場合などもあるのでご了承ください)
館長に、「日本は古代、中国から医療が入ってきて、それが日本で独自に発展し、漢方ができた。タイは中国の影響やインドの影響があり、タイの伝統医療ができていったのですか」と聞いてみました。
答えは「そういえると思う」という、なんとなくはっきりしないお答え。
大きな流れは、「昔は薬屋・ドラッグストアはなくて、病気になったら医者が薬草を取りに行くか、買いに行っていた。それからタイの医療ができた。それからタイ、中国、インドの医療が混じった。」とおっしゃいました。
私がこのような答えに仕向けてしまったようにも感じました…(シンプルに関係を尋ねるべきでした)
中国の生薬本 VS タイの生薬本
さて、いよいよ展示品を見ようとしたところ、館長が「ここにあるのは crude drug(生薬) です。」と言いました。そして手にしていたのは、中国薬学に関する分厚い本。「例えば、日本で馴染みのある霊芝もその一つですね。自然から採取された薬の材料です。」と説明しました。
タイなのに、なぜ中国薬学の辞典なのかと伺うと、ご自身は中医学を勉強したとのことで「タイのTTM(伝統医療の薬草?)の勉強は非常に難しく、覚える方法が主体」とも言われました。
中国の生薬辞典には、どのような効能があるか、どのような病気に使えるかのケース、応用がかかれていると説明されました。
そして、実際にひとつの生薬(丁香)を、中国の本とタイの本で比較して見せてくれました。中国生薬辞典は約2ページで、タイ語は1ページ半。文字量でみるとかなり違いました。中国の方は項目ごとに整理されています。
タイの伝統医療の勉強は難しい?
館長は、「タイにもTTM(タイ伝統医療)のドクターはいる。知識は彼らが持っているから、彼らから学ぶことができる。タイ伝統医療の方が学ぶのは難しいんだよね、でも、もしまだ自分が20歳なら、学ぶかもしれない!」と言われました。TTMの学校はあるようです。
その流れで、館長は現代医療に関する本もいくつか見せてくれました。「緑の本は、日本でいう漢方のようなものですね。あえて例えるなら…」と言いながら、関連書籍を次々と紹介してくれました。その情熱的な説明からは、館長がいかに伝統医学に愛情を注いでいるかが伝わってきました。
展示品の見学 館長の神対応
時間がすでに12時半を過ぎたのに、まだ展示品を見ていませんでした。
「時間大丈夫ですか?」と聞くと、「大丈夫!今日は何も用事がないよ。昨日と明日だったら会議があって自分がいなかったので、君はラッキーだね!」笑って言ってくれました。
お礼を言うと、「時間がないなら12時で閉めてたよ。ゆっくり見ましょう!」とのお言葉が。館長が説明をしてくれるつもりでいることにありがたく(神)、やっと展示品を見始めました。
たくさんの展示品
日本でいくつか漢方博物館を見たことがありますが、日本の生薬の展示と似ています。
「日本の博物館より生薬の展示物が多いです」と感想を言うと、「ありがとう!」との言葉が。努力して収集されてきたのだろうと想像しました。
展示品を見渡して、タイ、インド、という印象は少なく、「中国の印象が大きい感じがします」というと、「自分が中医学を勉強したから、そうなっているのは間違いないかも」とのことでした。これらの展示品は館長が時間をかけて集めたものと、教授たちから寄贈されたものだというお話が聞けました。
タイでの麻黄(エフェドリン)の規制
麻黄の展示の説明で、「タイではエフェドリンは使えない、規制されている」とのお話でした。
麻黄の主要成分はエフェドリンで、日本で最も良く使われる漢方薬、葛根湯に入っています。他に、麻黄湯、小青竜湯、麻杏甘石湯など、割とメジャーな漢方薬で重要な役割をしている成分です。
私は風邪を引きそうな時、すぐに葛根湯を飲みます。風邪をひかないための風邪薬と思っています。麻黄が使えないなら、タイの人たちは何、またどのような方法で対応しているのかが気になりました。
伝統医療に関する用具
เฉลว (チャリュー,Chalew,Chaliew)というこの星印の草棒は、薬草を煮込んだポットに入れて、それが薬だということ示すものだそうです。スープと間違ったらいけないですから。ただ、これは単に目印というだけでなく、深い意味がや願いがあるそうです。
その説明の動画がありました。字幕をONにして、自動翻訳(または日本語選択)してください。
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中途半端ですが、以上が2018年にメモをしていた内容です。
このブログの公開は2024年で、訪問から6年間後、やっと投稿できました。改めて館長さんに出会えたことに感謝をしています。今でも、その時のすごく楽しく温かい時間を覚えています。
生薬、薬、道具の写真などたくさんあるので、整理しながら後日、徐々に追加していきます。
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補足(博物館紹介)
以下の博物館案内ページの情報を抜粋しました。最新の情報でない場合もあり、また自動翻訳ですでご注意ください。
営業時間 毎週水曜日と木曜日の午前9時から午後12時まで。
電話番号 ページ内に掲載
この博物館は、世界中の他の博物館と学術的な協力や交流を行っています。日本富山県にある富山医薬薬科大学東洋医学研究所の薬草博物館も姉妹機関です。
展示内容:
- タワラウディ時代から現在に至るまでのタイ薬学の歴史と薬剤師道具の進化。医師の赤いバッグと薬草棒、薬を粉砕する機器、錠剤やカプセルを作る機器、計量器具など。
- タイ薬と薬草の使用法の進化に関する展示。
- コンピューターを使った薬草データベースの紹介。薬草の画像、効能、有効成分、使用方法や注意点などを表示。
- 面白い薬草に関するビデオやタイ薬学の歴史に関する映像。